2024年8月下旬、午前10時頃。突然、電気が止まった。
島には他にも建物があるので確認してみたところ、島全体に電気が来ていないようだった。
知合いや電力会社に電話をし、つかめた情報としては、島と本土を含む一部地域で停電が発生しているということだった。数時間で普及するという噂も飛び込んできたので安堵していた。
電話が鳴った。
「松島へ送電するケーブルのトラブルで一部地域が停電したようです。」と電力会社の担当者から伝えられた。「大変申し訳ないのですが、調査に加え、部品も特注のため修理には最短でも1ヵ月はかかると思います。」
電気は海底ケーブルを通して松島へ送られてくる。海底ということもあり現段階で原因は不明だが、電気は送れないとのことだった。
なぜか高揚している自分がいた。電気無し生活ができる。
電気が身近にある生活を送っていると、怠惰だとは思いつつもついつい電化製品を使ってしまう。
しかし強制的に電気のない環境に身を置けるチャンスなど滅多にない。それに加えその時、台風が近づいていた。島から出られないという環境もプラスされ、より生活の難易度が上がる。
ノロノロ台風と揶揄される動きの遅い台風が近づいていることもあり最低数日間は島から出られない。魚を獲ることもできなければ、冷蔵庫も使えないので食料の保存も難しい。考えれば考えるほど、生命力を試されている気がして胸が高鳴った。