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原始的な漁に出る

執筆者の写真: 脇村 拓嗣脇村 拓嗣

ナマコを食べたい。

ふと思った。


いつの日からか「食べたい=とりたい」になっている自分がいる。

キノコを食べたいと思った日にはスーパーではなくホームセンターへ行き、シイタケの菌を購入してきたりする。

ただし、水産物となると漁“業”。シイタケとは少し勝手が違う。専用の許可と一定量の水揚げも必要だ。


そもそも漁業を始めたきっかけは、生業として自然と向き合いたいと思ったからだ。島で古民家を直し、宿をする。山際の古民家なので草木の管理や大工仕事は求められる。草刈りをしたり、野菜を育てたり、時には木材に触れ、日常的に自然と接する。でもそれだけでは物足りなかった。


例えば、街中に住みながらオフィスで仕事をし、週末に山に登る。釣りをする。

それら全ての行為は自然の中にいるにも関わらず、その場からは宙に浮いた存在のように感じる。物理的には存在しても、あくまでも部外者なのだ。極端な持論ではあるが、漁師を始める前の自分は島に居ながらも、先に言う部外者のように感じていた。当事者としてその自然の景色の一部となるには何かが足りなかった。


物足りなさを感じながらも、興味を惹かれるがままにやりたいことにとことん手をだした。その結果の一つが漁業である。日常的に生態系へ深く入り込むという行為は、充実感と当事者の感覚を持たせてくれた。時には危険を伴う反面、恩恵を得ることもできる。

そうやって生物らしく生きていくことで、真に自然と向き合えるのではないかと思っている。



そんなこんなで半人前ながら漁業を営んでいる。漁業の許可というのは魚種、漁法や期間など細かく規定されており、所持している許可以外の漁業はできない。

ナマコをとることのできる漁法は様々だ。

その中でも船から海底を覗き、かけじ(長い竹を細工したもの)で捕獲するという“イサリ”をやりたかった。なんとも原始的で格好良い。移動にエンジンは使用するものの、それ以外は自力。道具も全て自作する必要があるところにも惹かれた。

(ちなみに、魚なども獲ることが出来る。基本的に夜間に行うのだが、魚の寝ているところをやす(モリ)で突くのだ。)





ベテラン漁師へ相談すべく、所属する漁業組合へ出向く。

「お前やこ(お前なんか)ができる商売じゃないわい!」

「でも、どうしてもやってみたいんです!」


ちなみにやりたいと思っても、その地域や組合によって取り扱っている漁法の種類や数も違う。存在しなかったり、定員オーバーだったりする。そもそも、あろうがなかろうが、そう簡単に許可をもらえることはない。よそ者ともなれば猶更だ。


初めて口にした日からは1年ほど経っただろうか。紆余曲折はあったが根気よく話を持ち出し続け、現在は許可をもらい操業することが出来ている。

現在出来る範囲の漁法を練磨しつつ、他の漁も覚えていきたい。


次は何を獲ろうか。




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